非接触ICカードの仕組みについて~エンボス加工が出来ない理由~
2017/04/27
上の写真は、非接触ICカードを透明化したものです。
非接触ICカードはさまざまな形で身の回りで使われています。具体的には、「Suica(スイカ)」・「ICOCA(イコカ)」・「PASMO(パスモ)」などの交通系カードや、「Edy(エディ)」などの電子マネーにも使われています。
普段、非接触ICカードの中身を見ることはありませんが、実はこちらの写真のようになっています。黒くて四角いものがICチップで、その周りをぐるっと囲っているのがループアンテナ(銅線)です。
今回の記事では、非接触ICカードの仕組みを踏まえた上で、“非接触ICカードにエンボス加工が出来ない理由”について、ご説明させていただきます。
非接触ICカードは、外部からの電流を中のアンテナが受信することで動く仕組み
当たり前のことではありますが、ICカードに“電源”はありません。では、一体どのような仕組みで中のICチップが稼働しているのか、不思議に思ったことはありませんか?
その答えは、「外部(リーダー)から発生している電流が電波に乗り、その電波(電流)をICカードのループアンテナが受信して動いている」です。この仕組みは「電磁誘導」と呼ばれており、空間に飛んでいる電流をアンテナがキャッチしているイメージです。
上記のような仕組みのため、電源がなくてもデータのやり取りを行うことができます。この仕組みは、非接触ICカードだけでなく、スマートフォンのワイヤレス充電器(端子が無い置くだけの充電器)でも使われています。
非接触ICカードで重要な役割を果たしているのはICチップだけだと思われがちですが、その周りに張りめぐらされたループアンテナの存在が必要不可欠なのです。
非接触ICカードにエンボス加工を行えない理由は、ループアンテナ(銅線)
お客様より、「非接触ICカードに、エンボス加工は行えますか?」とお問い合わせいただくことがありますが、エンボス加工を行うことができません。その理由は、非接触ICカード内に張り巡らされているループアンテナです。
ループアンテナは、ICチップと比べてもかなり繊細です。そのため、外部衝撃に弱く、ICカードを折り曲げたり、叩いたり、重い物を乗せたりすると、断線してしまうおそれがあります。
ループアンテナがどれか1本でも断線してしまうと、電流が流れずカードが使用できなくなってしまう可能性があります。実は、ICカードの読み取り不良の多くが、このループアンテナの断線が原因なのです。
エンボス加工はカードの裏面から叩いて加工するため、このループアンテナを断線させてしまう可能性があります。そういった理由から、非接触ICカードにエンボス加工を行うことが出来ないのです。
ループアンテナの位置や細さはメーカーにより違う
「ループアンテナの位置を避ければ、エンボス加工を行えるのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実はそう簡単にもいかないのです。
上の写真のICチップ及びループアンテナの位置はあくまで一例でしかなく、カードを作っているメーカーによってループアンテナの位置も細さもバラバラなのが現状です。セキュリティ上の兼ね合いなどから、ICカードの中身を開示してくれるメーカーは少なく、どこにループアンテナが通っているのか分からない以上、エンボス加工を行うことはできません。
非接触ICカードの少し不思議で便利な仕組みを知っていただくと共に、“非接触ICカードにエンボス加工を行えない理由”についても、ご理解いただければと思います。
その他、ICカードの作成に関する疑問点などございましたら、何でもお気軽に日本カード印刷までお問い合わせください。